本日は国立小、私立小学校の偏差値のお話をしたいと思います。
偏差値は通常お子様だけを対象に幼児教室の模試で算出されますが、小学校受験は親の試験とも言われ、合格可能性は模試偏差値のみでは計れず、実際の受験では、願書や面接、ご家庭と小学校の相性など、様々な要因で合否が決まります。
この割合も学校によって異なりますが、ペーパー・巧緻性・行動観察・口頭試問・運動・生活習慣などで構成される模試の評価が合格可能性に大きく影響することも事実です。
多くのお子様が受験する模試では点数に応じて偏差値が算出され、志望校ごとの合格可能性が出ます。この点、規模が小さいものの、中学受験、高校受験、大学受験と同じです。一部難関校においては具体的な模試の合格可能圏の偏差値が口頭開示されましたので、この範囲になりますがお知らせします。
あくまでお子様だけを対象とした模試の合格偏差値で、小学校の優劣や合格可能性、受験難易度ではありませんのでご留意ください(気を悪くされた方がいたら申し訳ないです)。
当然に、実際の受験ではご家庭の総合力が合格可能性に影響します。この点が中学受験以降と大きく違う点です。
偏差値の考え方
偏差値は、高い方が難しいという印象がありますよね。
偏差値とは偏差の度合い、もっと簡単に言うと、平均点からどの程度離れているかを示す指標です。
平均点が80点の時の100点と、平均点が50点の時の100点は、重みが違います。
このような時に、偏差値で計ると、100点の価値が反映されます。
始めに申し上げておきますと、偏差値での評価は、小学校受験において中学受験以降と比較して重要性が劣ります。
なぜなら、中学受験以降はペーパーの割合が極めて高くなる試験であるのに対して、小学校ではペーパーが加味されるのはせいぜい3割~7割程度だからです。加えて、この偏差値自体もあいまいです。なぜなら、ペーパー以外のテストにおいても点数化することになりますが、この評価は学校によってまちまちだからです。
それでも、偏差値というものは難易度を示す指標の一つとしてわかりやすく、日本においてよく利用されています。
今回、私の主観が入らないように下記2点の情報に基づき、小学校の偏差値を整理しました。
・大手幼児教室模試の合格圏に入る偏差値
・具体的に幼児教室より情報開示があった学校の偏差値
できるだけ数字の信憑性を高めるため、上記2点のみを検討材料にしています。
先生が具体的に説明した内容に基づき、模試の成績(通常、複数校書けます)で間違いない旨、照合しています。
多くの模試においては志望校も複数記入しますが、優秀な方が多く志望した学校の合格偏差値は高くなります。また、具体的に偏差値の開示があった場合は、その数字も考慮に入れています。
この点、後述する偏差値は全体的に数字が控えめですが、これは高いレベルの幼児教室で模試を開いた場合、差が生じにくいためです。偏差値は実力差があり、ばらつきが多いほど上下の振れ幅が大きくなりますので、レベルの高い集団で構成される試験の場合は、上へ行きにくくなります。入塾の敷居が高く、ハイレベルな中学受験のSAPIXでも偏差値50であれば難関校へ合格できると言われますが、母集団のレベルが高ければ偏差値は上がりにくくなります。
下記偏差値につき、厳密には同じ偏差値帯で違いがありますが、これ以上分けると恣意性が混入する恐れがあるので控えました。
あくまで模試による偏差値と、大手幼児教室の講義で明言していた部分を偏差値ランキングにすると、下記の順に並んでいます。
首都圏の国立・難関私立小学校の合格圏偏差値一覧
合格圏偏差値 | 国立小学校・私立小学校 |
62~ | 慶應義塾幼稚舎 雙葉小学校 |
60~61 | 慶應義塾横浜初等部 早稲田実業学校初等部 |
58~59 | 暁星小学校 聖心女子学院初等科 白百合学園小学校 横浜雙葉小学校 洗足学園小学校 筑波大学附属小学校 学習院初等科※1 |
56~57 | 立教小学校 立教女学院小学校 東洋英和女学院小学部 成蹊小学校 東京都市大学附属小学校 桐朋小学校 お茶の水女子大学附属小学校 |
54~55 | 田園調布雙葉小学校 東京女学館小学校 日本女子大学附属豊明小学校 東京農業大学稲花小学校 成城学園初等学校 宝仙学園小学校 森村学園初等部 東京学芸大学附属竹早小学校 東京学芸大学附属世田谷小学校 東京学芸大学附属大泉小学校 東京学芸大学附属小金井小学校 |
※1:2021年2月25日、学習院初等科を追記しました。こちらは教室から直接明言されておらず、模試の合格可能性を他校と比較した推定値です。
上記表は個人で参考にしていただくために作成したものですが、無断転載が多く、誤解を招く内容も多いです。
下記に偏差値について厚めに補足説明させて頂きます。
偏差値判断の留意点
この点、留意すべき点が3点あります。
一点目は、試験が先に実施される神奈川の学校です。神奈川の学校は慶應義塾横浜初等部を除き9月に実施されることが多いですので、併願しやすく、志望度とは別に多くの実力者が受験します。このため、志望度とは異なる次元で、合格偏差値が上がる傾向があります。具体的には横浜雙葉、洗足などが挙げられます。
二点目は、月齢です。月齢は関係ないと名言している学校もありますが、過半数の学校は、事実上何らかの調整を加えています。上記偏差値は月齢を9月末生まれで算出した数字です。4月生まれは2~3上へ、3月生まれは2~3下へずらして合格偏差値を算出すべきです。
三点目は、試験日程です。上述の神奈川の学校は辞退を見越して多めに合格者を出す傾向があり、試験日程が遅めの学校は、第一志望の学校が決まれば辞退します。具体的には、慶應義塾横浜初等部は倍率が高い学校ですが、11月の中旬以降、2度に渡って試験が行われますが、それぞれ10%~20%の辞退者がいます。全体的に試験日程が遅めの国立小も同様です。上記偏差値にはこのような実際の合格者数に対する反映がなされていません。
私自身の当初予想より全体として国立の偏差値が低いと感じましたが、国立は倍率が高いものの、難易度は抽選による倍率が含まれていると考えたほうが良いそうです。確かに、筑波など二次試験を受験できるのは5割~6割で、どんな実力者も運がなければ受験できません。抽選倍率を加えた入学難易度であれば、筑波や竹早がトップになり、実力も踏まえた難易度では私立難関大がトップになるということです。
あと倍率が高くて話題になった新設2年目の農大稲花も思いのほか低かったです。私見ではもう一つ上かな?とも思ったりしますが、大手幼児教室にて明言されていたのでこの位置。2021年度も難化していますので難易度は高いと思われますが、複数受験できることから、評価が難しいところもあります。2回チャンスがあれば、1回当たりの難易度は当然にあがります。
模試の偏差値を正確に算出できるのは、皆さんご存知の大手模試数件だけと考えていますが、2021年度は模試の人数を数十人に絞り込むこともありました。人数が少なすぎる場合の偏差値もまた実態を反映しない可能性がありますのでご注意ください。
附属校の小学校受験と中学受験偏差値は全く別物
上記小学校受験の偏差値は、同じ附属校が中学校にあっても中学受験の偏差値と全く異なりますのでご留意いただければと思います。理由は下記の通りです。
①偏差値は母集団のレベルが散らばると上下の差が大きくなるため、見かけ上の数字自体は中学受験の方が高くなりやすいこと
②私立小学校の偏差値は、中学に内部進学するプレミアムや、中学受験により上位の学校へ進学する期待値が含まれること。
③私立小学校の恵まれた環境で6年間過ごす教育効果と、小学校のブランドを含める必要があること
④国立は抽選倍率も含める必要があること
例えば、中学受験で半数以上が上位の中学校に進学する私立小学校では、その進学実績に価値があるので、中学の偏差値より小学校の偏差値が高い位置付けとなります。しかし、中学の偏差値は全体的に振幅が上下に広がります(高校はもっと広がる)ので、その一部分だけ切り取るとわかりにくく、相対的に比較する必要があります。
この他試験日程、男女、定員などにもよりますので、中学偏差値は参考程度に考えた方が良いです。
模試偏差値と合格難易度との違い
小学校受験はお子様が行う考査の他、願書、親子面接、ご家庭の属性、学校との関係(きょうだい、訪問回数)など様々な要素により、総合的に勘案して合否が決まります。この割合は学校それぞれですが、模試でカバーするのはあくまで考査部分のみです。
今回の偏差値は合格難易度とは異なりますので、解釈にはお気を付けください。
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