本日、英語民間検定試験の導入延期が正式に萩生田光一文部科学相より発表されました。
2020年1月のセンター試験で従来のセンター試験形式の受験は終わり、2021年1月から始まる大学入学共通テストで、ベネッセや日本英語検定協会など、民間による英語検定試験が導入される予定でしたが、まず延期は確定しました。2024年まで延期されるお話も出てきています。共通テストの制度自体も大きな話ですが、今回英語に関して民間試験採用を延期するのも非常に大きな決断ですし、受験生にも当然に大きな影響を与えます。
東京オリンピックのマラソン開催を北海道に変更した論点と通じるものがありますが、来年の受験に向けて、照準を合わせて準備している受験生もいるわけですからね。勉強することに変わりはないので、一見大きな影響がないように見えるかもしれませんが、本人にとっては大きな影響があります。民間検定試験で良い成績を取るために準備を開始していれば、その時間は受験に関しては無駄だったということになります。
本件、試験が直前になるに従い、曖昧な試験制度に対して学生が主体的に反対していました。
8月1日、東京都港区の日本学術会議講堂で開かれた、高校の国語教育をめぐるシンポジウムでは「今の時期になってまで制度や問題に変更が加わるような、おぼつかない大学入学共通テストは、早急に延期もしくは中止にしてください」(2019年8月26日アエラドットより引用)と文部科学省の視学官に進言したり、同様の主体的な反論が多く報道されています。
先日、萩生田光一文部科学相が先日「自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」(2019年10月28日朝日新聞より引用)という表現で説明したことから、下記日本国憲法や教育基本法における教育を公平に受ける権利まで波及し、強い批判を受けている状況です。
日本国憲法第26条1項
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」
民間検定試験導入の評価方法と問題点
大学入試センターによると、本年10月時点で、4年制大学の71%(国公立大学95%、公立大学86%、私立大学でも65%)が新制度を利用する予定でした。
英語の点数の反映の仕方は、異なる民間試験の評価はA1(最も簡単)、A2、B1、B2、C1、C2(最も難しい)とカテゴリに分類され、これを出願条件にしたり、カテゴリごとの点数に換算したり、またカテゴリを介さず点数評価されます。
従来のセンター試験の英語が廃止され、上記のような異なる民間試験を採用することで生じる問題点は下記のとおりです。
多くは公平性の確保という点から問題が生じています。
厳格な試験会場確保
センター試験では、監督官も含め、不正やトラブルを防止する対策がかなり細かく規定されていますが、民間試験ですと、大学入学試験としての試験は「経験したことがない」という結論になります。
民間試験の試験スタイルも様々で、監督官も多くはバイトです。
不正を見つけてやろうという意図があるかは人によってまちまちでしょう。
大学入試に採用する試験としての本番となると、不正、トラブル防止のさらなる課題が出てくるはずです。
厳格な対応がなくなれば不正の温床となりますし、中途半端に厳格に対応すると、今度はトラブルが生じた時に不備を突かれるでしょう。公認会計士の監査に似てるなあ、、、と感じたりもします。
独立性
民間業者は長年試験を作成している専門家集団です。
問題自体を作成することは容易ですが、民間業者が試験に沿った自社の教材を販売していますので、独立性に欠けるのではないか、という疑問が受験生にずっと残ることになります。逆もしかりで、全く出ないのも不自然です。
では、そのバランスはだれが決めるかというと、非常に難しい問題と思います。
結局は、最善の対策はその民間試験を作成する業者の教材をしっかり押さえるということになると思います。
独立性については、事実がなくても疑われるだけで適切な試験はできない、、、公認会計士の監査に似ているなあ、、と更に感じます。
費用と期間の制限
従前の予定では、高3の間、すなわち2020年4月以降に受験した資格・検定試験が対象となっていました。
それ以前の成績は原則考慮されません。が、例外が何か不明でした。加えて、費用も5,000円程度から2万円超かかります。試験対策にかかる費用はもっとかかりますね。
言い切りますが、これまでのシンプルなセンター試験制度であれば、安価な通信教材、優良な参考書があれば、個人の努力次第で偏差値70ぐらいはいけます。これに家庭の財務力も影響することになります。私は当時新聞配達をしていたほどの状況でしたので、対策のためのお金はなかなか捻出できなかったでしょうね。
大学ごとに統一性がなく、多めに試験を受験しておく必要性
共通試験で想定されている試験は、あくまで共通試験で採用するのみで、共通試験のために作られた試験ではありません。
このため、それぞれの試験で、点が伸びやすい試験や、伸びにくい試験もあるでしょう。試験の均一化が図れません。
更に、大学で採用する採用試験が異なりますので、受験生は予め、志望校の対象試験を調べなくてはいけません。ここまではまだ譲歩したとしても、あとで試験を受けたくなっても受けられない大学も出てきますね。これは非常に気の毒です。
であれば、受験生は保守的に複数の民間試験を受験するケースもでてくるでしょう。
すると、費用負担のさらなる拡大につながります。
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