本日、伸芽会主催の池谷裕二教授のセミナーに参加してきました。
脳研究視点で幼児教育テーマを取り上げ、様々なお話を伺いました。
非常に有意義な内容でしたので、要旨のみ、差し障りのない範囲でまとめておきます。
内容は研究成果に基づく結果としてのお話でしたので、非常に説得力がありました。
また、教授も著名な方であるにもかかわらず腰の低い方で、説明が非常に上手で、聞き手の心をつかんでいました。
私の聞き間違いもありえますので、ご興味がある分野は教授の著書などから詳しい裏付けを取っていただければと思います。
子育てが大変な理由と重要性
先天知
人間は先天知がインストールされていない。一方、ひよこなどはインストールされており、数歩先の崖など、予め一定の危険を把握できる。人間は生まれつき危険がわからない一方で、環境には柔軟に対応できる。これは親が守る前提であり、人が知的であることの裏返しと言える。
幼児の脳は大人の言うことを聞くようにデザインされていない
ヒトの歴史をさかのぼると、大人は子供の面倒を見ていなかった。面倒を見ていたのは兄弟であり、普段かかわるのは友達。
子供は、兄妹や友達の言うことを聞く傾向がある。このため、園児たちの交友が人間を育むと言える。
これから求められるもの
良い子は親の希望通り育てるのではなく、親に依存せずに親を不要とする子。
空気を読む力がこれから求められる。情報の答えを伝達するのが求められるのではなく、情報を隠して伝え、自分で悟らせるのが望ましい。
子供の自発性
自発性だけではだめ。
扉を開けることは動物でもできる。閉めることは自発性だけでは成立しない。
内面化
内面化には外発的強化、代理強化、自己強化があり、ほめる必要もない自己強化が望ましい。
ほめるとしかる、どちらかよい?
動物で実験する限り、褒めるのが一番望ましい。次に望ましいのはアメとムチの使い分け、一番悪いのはしかること。
しかし、人間の場合はただほめれば良いという単純な話ではない。
いい成績をとった結果をほめるのと、プロセスをほめるのでは、後者の方が成績が伸びる研究結果がある。
前者の場合は、簡単な問題を取り組むようになり、後者は難しい問題を解くことが好きになる。
前者の場合は、粘り強さがなく、自己満足の傾向。後者の場合は粘り強くなり、困難にもチャレンジする性格になる傾向。
行動と心が一致
認知的不協和理論
事実と心を一致させたいと本能的に思うことから、
変わらない事実に、心を変えて納得しようとする理論。
よくあるたとえ話は酸っぱいブドウのイソップ童話。
狐が気の上にあるブドウを発見する。
→食べたいと思う。
→届かない(取れないという変えられない事実)
食べたい⇔届かない
という矛盾が生じる。これが認知的不協和理論です。
この心理的矛盾(心のモヤモヤ)を解消するために、心の中を変えてしまうことがあります。
→あのブドウは酸っぱいからやめとこう!
これが不協和の解消です。
このように変えられない事実に対して、考え方を変えてしまうことがしばしばあります。
これを家庭に置き換えると、日々の学習にも活用できます。
この応用で、事実に即して人の心、考え方を誘導して学習させるやり方は効率的です。
ゲームをが好きな子供に対して、下記の通り伝えて辞めさせたらどうなるでしょう。
「勉強しなさい」
→しぶしぶ辞めるので、ゲームは好きのまま。
「そろそろ勉強を始めたらどう?」
→自分の意志でゲームを辞めた、という事実があるので、この事実に即してゲームを面白くないと思う傾向がある。
また、絵が好きな子は、絵が好きという自発的な行動をしている。
これに対して、「絵が上手ね、えらいねえ」と言うのは駄目。
「この絵はお母さん、とてもすきだわ」という方がよい。
もっと簡単に言うと、「親や先生が笑顔で先に動く」のが良い。
片付けで言うと、親が笑顔で楽しそうに片付けるのが良い。子供が興味をもったら一緒にやろうという言うと良い。
言ってはいけない言葉:駄目、できない、無理の類。~しないと~できない。
言うべきは「~したら~できる。」
知能とは何か
IQの創案者として知られるフランスの心理学者、アルフレッド・ビネーによれば、知能向上に必要なものは、下記の通り
・論理的思考(数学)
・言語(国語)
・熱意(見えない学力)
熱意とはワクワクする力、好奇心。受動より能動が大事。
ネズミに未知のものを近づけた時に、受動的に触れた時より、自分で興味をもって近づいてきたときの方が、脳が大きく反応する実験結果がある。
迷路を作ってゴールに餌を置き、ネズミが歩き回る実験を行うと、最初はつまずくが、何度も繰り返すとどんどん早くなり、いずれ最短経路を覚える。
最初にたくさん失敗したネズミは、より早く最短経路を覚える傾向がある。
失敗は成功のもと、とも言える。
最短経路を覚えた後に途中で壁などを置いてみると、新たな経路を探す。
この新たな経路を見つける力が応用力を示す。これも失敗を多くしているネズミほど多様性が高まり、対応力ががある。
また、失敗にも良い失敗と悪い失敗がある。じっくり考えて失敗したほうが学習が促進し、成長する。成功することではなく、推測することに意味がある。
やる気に依存せず勉強を継続して行う方法
自分の血圧が下げられないのは、自分の血圧がわからないから。自分の血圧がわかれば、一定のトレーニングの後に、上下させることができるようにある。これをバイオフィードバックという。α派も同じ。
脳に側坐核というやる気を生む箇所がああり、これも上げ下げさせることができる。
これを活性化させるためには、楽しいことを想像する。楽しくご機嫌に生きるべき。
お箸を縦に噛んでマンガを読む場合と、横に噛んでマンガを読むと、後者の方が楽しいという実験結果がある(一時教科書にも載っていた。)
心を生み出すのは体であると言える。表情や姿勢が感情を形作る。これを作業興奮という。
つまり、勉強できる人はやる気に依存せず、システムに従って粛々と勉強する。
やる気に依存すると一過性であり、やらないことの言い訳にもなる。
継続したい場合、システムで熱意を補完できる。
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