年収1,200万円以上で児童手当支給なし?法案の内容と仕組みを会計士がわかりやすく解説します。

本日は、2021年2月2日に閣議決定された「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案」について、わかっていることを現行の特例給付などの仕組みと比較しつつ、できるだけわかりやすくお話したいと思います。

目次

閣議決定から法律まで

法律の立案から公布までの流れは下記の通りです。

法律案の原案作成
内閣法制局における審査
国会提出のための閣議決定
国会における審議
法律の成立
法律の公布

各省庁で作成された原案は審査を経て閣議決定されると、内閣総理大臣から法案が国会に提出され、次に国会における審議が行われます。
提出された法案は、議長より委員会へ付託され、委員会による審議、審査に入ります。これが終了されれば、本会議となります。衆議院、参議院両方で同様に本会議まで表決されると、法律となり公布されます。

児童手当の削減については昨年から議論されており、後述する特例給付の撤廃などの案も政府側から挙がっておりましたが、児童手当の拡充を目指す公明党の反発もありました。今回、折衷案の形で収入1,200万円以上は廃止、特例給付は存続に落ち着いたと思われます。

法改正案のポイント

現在、児童手当は下記の通り一定の高所得者に対して金額制限が設けられています。
通常は下記現行案の通り0歳から中学生までもらえることとなりますが、後述する特例給付に該当する場合は、月額5,000円に減額されます。

現行では月額5,000円ながら支給されることにかわりはありませんでしたが、本日閣議決定した改正法案(児童手当法子供子育て支援法)では、これに歯止めを設け、1,200万円以上の収入(実際は特例給付のように所得制限額を扶養人数で区分することも想定される)がある世帯(手当を受け取る所得が多い方)は児童手当を受け取れない法案となっています。この1,200万円が960万円に対応するモデル世帯を指すのか、一律かは未確認ですが、2021年2月2日時点では扶養3名のモデル世帯と推定されます。

このように、1,200万円基準に該当すれば、これまで受け取れていた月額5,000円ももらえなくなってしまいます。廃止対象となる子供の数は61万人とのことで、これに60,000円(月額5,000円×12か月)を乗じると366億円になり、浮く財源として報道されている年間370億円に近似しますね。

これにより浮いた財源で14万人分の保育所整備など待機児童対策、企業助成金に優先すると報道もありましたが、直接的に個人の収入が減ることもあり、ネット上では批判の声が多数派です。

現行法
支給対象児童 通常 所得が特例給付に該当する所得制限額を超える場合
0歳~3歳未満 15,000円(一律) 5,000円
3歳~小学校修了前 10,000円
(第3子以降は15,000円)
中学生 10,000円(一律)
法改正案(2022年10月~)
支給対象児童 通常 所得が特例給付に該当する所得制限額を超える場合 所得が収入1,200万円(ベースの所得制限額と推定)を超える場合
0歳~3歳未満 15,000円(一律) 5,000円 なし
3歳~小学校修了前 10,000円
(第3子以降は15,000円)
中学生 10,000円(一律)

特例給付の内容と計算方法

よく児童手当が減額される目安の金額として、960万円という数字が具体例として挙げられますが、これはお子様2人と専業主婦奥様の計3名が扶養親族となる場合の基準となる収入額一例です。
実際は所得により判定され、所得は下記のように計算されます。

所得額(A) - 控除額(B) = 所得制限限度額と比較する所得(C)

所得額(A):総所得金額(※1)、退職所得金額、山林所得金額、土地等に係る事業所得等の金額、長期譲渡所得の金額、短期譲渡所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、条約適用利子等及び条約適用配当等の合計
(※1…所得が給与所得のみの方の場合、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄の金額。)

控除額(B):法定控除額(社会保険料控除及び生命保険料控除相当額の一律控除)の8万円の控除の他、雑損控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除の各控除額、障害者控除(1人につき27万円、特別障害者の場合、40万円)、寡婦(夫)控除(27万円、特定の寡婦の場合35万円)、勤労学生控除(27万円)の合計

次に、上記(C)の所得と下記の所得制限額を比較し、所得の方が多ければ、特例給付に該当します。

下記のように扶養親族の数が多いほど許容される所得制限額は大きくなり、基準となる金額は異なります。

扶養親族等の数 所得制限限度額(単位:万円) 収入額(単位:万円)
0人 622 833.3
1人 660 875.6
2人 698 917.8
3人 736 960
4人 774 1002
5人 812 1040

この計算式は、622万円+38万円×扶養親族で計算されます。老人控除対象配偶者、老人扶養親族に該当するときは、1人につき限度額に6万円を加算します(44万円となります。)

今回は、この特例給付の上に、更に基準が設けられるということとなりますね。
詳細はまた今後明らかになるでしょうから、続報を待ちましょう。

※本記事は専門的な情報を提供するものではなく、執筆時点の情報に基づき、個人の理解を促すことを目的として記載してます。
一部推定が入り、法改正などにより異なる内容に変わる可能性もありますので、ご自身で常に最新の情報をアップデートいただけますよう、よろしくお願いいたします。

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