小学校受験後、ご質問を受ける機会が増えましたが、冬に入って多いのが、学習方法や受験塾のご相談です。
最近はペーパー逃げ切り型の対策をしている塾もありますが、一定の合格実績をあげており、気になる存在となっています。
戦略として理に適った一面もあり、うまく波に乗れば良いのですが、当然に失敗してしまう方も多くいます。
この点、小学校受験本番では、難問は望まれていませんので、最終目的を見据えて、綿密な学習計画や、局面に応じた柔軟な判断が必要です。勉強方法は千差万別ですが、受験セオリーや経験から、おすすめしない学習方法もございますので、この点、事例を挙げてお話したいと思います。
今回、図で示しましたのでご参考になれば幸いです。
上図グラフは本試験までの時間を横軸として、教室内の成績を縦軸で表したものです。小学校受験において、合格可能性は教室の成績とは中学受験ほど一致しませんが、一定の相関関係はあります。
ここで、伝統的な大手幼児教室が目指しているのは、一般に①の黄色の曲線です。試験直前でお子様の調子がトップに持ってくるように意識したカリキュラムになっています。よって、ペーパー難易度も春ごろまでそれほどではありません。
一方、②と③は先行逃げ切り型を狙った形のパターンで、新年長の冬から本試験と同等以上の難易度の問題に取り組み、年長では時間的・精神的余裕をもって取り組もうというスタンスです。これもうまくはまれば強いです。
ここで注目頂きたいのは、赤色で示す志望校の合格ラインで求められる問題の難易度は、それほどでもない点です。
私共はこの点、前年の難関校の問題傾向は概ね確認済ですが、幼児教室の問題の方が全般的にずっと難しいです。
小学校受験が終わった後も色々な問題に触れて気づきましたが、難問に取り組むこと自体は簡単です。
サピックス他、かなり難しく優良な「ちえ」ジャンルの問題を出しており、一般書籍でも購入できます。しかし、小学校受験のレベルを超えた埋没論点に長い時間をかけて取り組むのは非常に危険です。出ない問題に時間をかけて悩んでいる間に、ライバル達(上記黄色の①)は基礎を着実にこなし、成績を上げてきます。
恐らくここがポイントで、バランスよく教室の問題を消化できている方は上記①のようにはならず、波に乗れますが、消化できていない方は、基礎と埋没論点の対応を混同しがちです。娘も基礎を落としてしまいがちな時期があり、基礎重視に回帰した時期がありましたが、その後直前期で成績は非常に安定しました。
教室内の順位や模試にとらわれて、基礎と難問を同時にケアしようとすると、基礎がいつの間にか抜け落ち、最後に足元を掬われてしまう危険があります。教室の教材についていけてるかどうかをよく判断してあげて頂ければと思います。
学習バランスにもよりますが、出題可能性の低い難問に30分かけて悩むより、頻出問題の基礎を30分解いて、1問ぐらい間違って反省する方が恐らく有益です。この幅はお子さまによって異なり、できる範囲が広いお子様にとっては基礎と同等になりますが、まだ間に合っていないお子様もいると思います。
もう少し掘り下げますと、1月から夏までに溜まった教材を、100%に近いレベルで本試験で解けるように復習しておきたいところです。塾で初めて取り組み、その後家で復習したとして、それで終わりにしてしまうと危険です。時間が経って、忘れていないかどうか確認する機会が必要です。
特に9月以降の超直前期はどこまでをしっかり抑えるか、判断が必要となります。新しい分野を広げるか、既出の基礎をしっかり抑えるかの判断です。
このため、先にペーパー学習の先取りを目指す場合は、予め合格までの計画を立てて学習を進め、直前期はお子様の進捗に合わせて、難問をひたすら追求するだけではなく、着実に基礎を固めていったほうが合格の可能性が高まるかもしれません。
参考として載せたのが②のパターンです。全体のレベルが上がってくるので成績の伸びが止まっているように見えますが、既に必要な範囲の学習は終えており、基礎を固めて、より早く解けるように工夫したり、行動観察など他のジャンルも含めて合格を盤石なものにしているというニュアンスで考えて頂ければと思います。
このスタンスで勉強される、穴のない万能型はライバルとして考えてもとても手ごわい存在ですよ。
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