幼児教育の経済学 ジェームズ・J・ヘックマンの研究成果について

幼児教育の経済学

皆さまこんばんは。
今日は書評です。

先日、ボーク重子さんの講演で事例に挙げていたジェームズ・J・ヘックマンの著書、幼児教育の経済学を読みました。
ボークさんの講演で仰っていたことと同じことが書いてあり、考え方に影響を受けているのも明らかです。それ以降、引き込まれて一気に読んでしまいましたので、かみ砕いて要旨をまとめます。

この書籍ですが、ヘックマンの著書を翻訳し、解説する形で話が進んでいきます。書いてある内容に共感できるかどうかは人それぞれでしょうが、非常に読みやすいので、読み物としてもお勧めです。

ヘックマンの研究が注目される理由は、彼の幼児教育を対象とした研究が長期にわたることに因ります。

目次

ペリー就学前プロジェクト

ヘックマンの代表的な研究の一つに、ペリー就学前プロジェクトがあります。
これは無作為抽出に基づき、子どもが成人するまで追跡調査し、長期にわたり、幼児教育の効果を検証しています。これはこのブログのテーマと完全に一致するところで、興味があるところ。

この研究は、1962年から1967年にミシガン州で、低所得のアフリカ系家族58世帯を対象に実施されました。就学前の幼児に対して、下記教育を施しました。

・毎日2時間教室での授業
・週に一度、90分の家庭教育指導(内容は非認知能力指導、自発性重視)
・上記を30週間

この教育を受けたグループ、受けなかったグループを40歳まで追跡調査しました。すると、下記調査結果が得られました。

☆14歳時点での基礎学力達成
教育を受けたグループ:49%
教育を受けなかったグループ:15%

☆留年せず高校卒業
教育を受けたグループ:66%
教育を受けなかったグループ:45%

☆40歳で月給2,000ドル以上
教育を受けたグループ:29%
教育を受けなかったグループ:7%

また、40歳時点でも持ち家率も同様の比率でした。40歳まで追跡とは凄いですね。連絡がつながるようにするだけでも難しいと思いますが。

この被験者の子供は、当初IQが高くなったが、その効果は30週が過ぎて4年を経過すると効果がなくなったそうです。しかし、IQ以外の非認知能力の向上が認められ、上記の☆のような差が14歳以降生じたそうです。

ここでのポイントは、ヘックマンはIQ≠非認知能力ということですね。このあたりの前提は通常皆知りませんので、ボークさんの講演時では理解しにくい所です。

またヘックマンは、この幼児教育のタイミングについても説明しています。ヘックマンは、「幼児期の介入の質」が子供の成人後の成功に大きく影響を与えるとしています。幼児期に質の良い教育投資を行うことが、しっかりした土台を作り、将来大きなリターンを得られるとのこと。

このようなヘックマンの考え方は、要約すると「教育を受ける機会が少なく、経済的に恵まれない子供たちに対して、質の良い教育を施すことで公平性を確保することができる。」という考え方に通じます。

幼児教育の経済学

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ジェームズ・J・ヘックマン
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