本日、コロナで今後の出産数減少を危惧する報道を耳にしました。
確かに、今後減っていく結果は容易に想像できますが、皆さま、コロナ禍の中で、婚姻者数や離婚者数はどのように推移していると思いますか?それぞれ減りそうな気もしますし、増えそうな気もしますよね。結果は後述するとして、これらの傾向は、出産数にも影響するはずです。
今後の出産数が増減する要因は複合的ですが、原因は下記に二分されると考えます。
①従前と同じ要因(晩婚化、婚姻率低下など)
②コロナ禍による影響
この点、結果として前年同月の比較と、当年度の月次比較を同時に行うことで、上記傾向を切り分けできると考えます。
気になって厚生労働省の人口動態月報の最新版(4月分が9月4日にリリース)を調べてみたところ、面白いデータが見つかりましたので、整理してみました。
【2020年4月と2019年4月】
出生者・死亡者・婚姻者・離婚者数の前年同期比較
まず、最新のデータに基づき、2020年4月と2019年4月の単月にて比較しました。
2020年 | 2019年 | 増減人数 | 増減率 | ||
出生 | 71 100 | 68 805 | 2 295 | 3.3% | |
死亡 | 112 407 | 111 894 | 513 | 0.5% | |
乳児死亡 | 115 | 132 | △ 17 | -12.9% | |
新生児死亡 | 52 | 62 | △ 10 | -16.1% | |
死産 | 1 543 | 1 621 | △ 78 | -4.8% | |
自然死産 | 657 | 762 | △ 105 | -13.8% | |
人工死産 | 886 | 859 | 27 | 3.1% | |
周産期死亡 | 207 | 259 | △ 52 | -20.1% | |
妊娠満22週 以後の死産 |
169 | 209 | △ 40 | -19.1% | |
早期新生児死亡 | 38 | 50 | △ 12 | -24.0% | |
婚姻 | 37 233 | 36 313 | 920 | 2.5% | |
離婚 | 16 267 | 20 685 | △ 4 418 | -21.4% |
出展:厚生労働省人口動態調査を基に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
こちら、コロナ禍の影響がない月と、コロナ禍の真っただ中の数字の比較となります。
実際の数値として色々わかることがありますね。
まず、出生者数が増え、死亡者数も増えています。これが何を示すかと言うと、出生者に関して言えば、コロナ禍前で例外なく妊娠しているわけですから、コロナ禍で新生児の死亡率にも異常が見られない以上、コロナとは無関係です。生まれる月はブレもありますがから、数か月に渡ってみた数字の方が正確でしょう。
一方、死亡者に関しても増えていますね。これはコロナに関する影響もあると言えるでしょうが、新生児、乳児の志望者数に大きな変動なく、出生時に関しては影響はなさそうです。こちらは、1~3月の累計の数字と比較したいところです。
そして面白いのが将来の出産数にも影響すると思われる婚姻数、離婚数です。なんと、婚姻数は増えて、離婚者数は激減しています。興味深いデータですが、他の月も気になってきたので、遡って見てみましょう。
【2020年1月~3月と2019年1月~3月】
出生者・死亡者・婚姻者・離婚者数の前年同期比較
2020年 | 2019年 | 増減人数 | 増減率 | ||
出生 | 200 704 | 203 024 | △ 2 320 | -1.1% | |
死亡 | 362 526 | 373 255 | △ 10 729 | -2.9% | |
乳児死亡 | 390 | 424 | △ 34 | -8.0% | |
新生児死亡 | 178 | 197 | △ 19 | -9.6% | |
死産 | 4 664 | 4 798 | △ 134 | -2.8% | |
自然死産 | 2 084 | 2 180 | △ 96 | -4.4% | |
人工死産 | 2 580 | 2 618 | △ 38 | -1.5% | |
周産期死亡 | 649 | 708 | △ 59 | -8.3% | |
妊娠満22週 以後の死産 |
510 | 559 | △ 49 | -8.8% | |
早期新生児死亡 | 139 | 149 | △ 10 | -6.7% | |
婚姻 | 150 837 | 136 565 | 14 272 | 10.5% | |
離婚 | 55 699 | 54 971 | 728 | 1.3% |
出展:厚生労働省人口動態調査を基に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
1~3月の累計ですと、出生者も死亡者も前年と比較して減少傾向でした。
出生者は4月累計では昨年とほぼ変わらずということになります。
一方、死亡者は1~3月で大きく減少していましたが、4月では増加に転じたことになります。
婚姻者数と離婚者数は、これまた興味深い結果となっています。婚姻者数は4月と同じく増加傾向で、離婚者数は微増。
すなわち、前年と比較して4月まで結婚を控えるという傾向は見受けられず、昨年より増えています。
私が調査不足だったのかもしれませんが、実は増えていたとは意外です。また「コロナ離婚」という言葉をよく耳にしますが、4月までの累計で見れば前年と比較して増加していません。3月まで乗り切れば、4月は落ち着いたとも考えられますが。
2020年と2019年の前年同月比較
確認のため、前年同月の増減者数だけ抽出して比較してみましょう。
1-3月累計 | 4月 | ||
出生 | △ 2 320 | 2 295 | |
死亡 | △ 10 729 | 513 | |
乳児死亡 | △ 34 | △ 17 | |
新生児死亡 | △ 19 | △ 10 | |
死産 | △ 134 | △ 78 | |
自然死産 | △ 96 | △ 105 | |
人工死産 | △ 38 | 27 | |
周産期死亡 | △ 59 | △ 52 | |
妊娠満22週 以後の死産 |
△ 49 | △ 40 | |
早期新生児死亡 | △ 10 | △ 12 | |
婚姻 | 14 272 | 920 | |
離婚 | 728 | △ 4 418 |
出展:厚生労働省人口動態調査を基に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
これでコロナ禍の関係ない昨年度と比較しながら、当年度の傾向が掴めます。
死亡者は減少傾向が増加傾向に変わった可能性があります。推測の域は出ませんが、この傾向が続けばコロナの影響を示唆するやや不気味な指標となります。
婚姻者数が増え、離婚者数が減っているということで、不安な世の中で一人でいるよりも家族でいることを望むご家庭が増えているのかもしれないです。この傾向がも5月以降続けば、この仮説も信憑性が出てきます。
一方でソース未確認ですが、報道によれば港区で5月以降の婚姻届の数が減少傾向とのことです。まだコロナ禍の影響を判断するには最新の情報で判断する必要があるでしょう。
コロナ禍による出生者数の影響は、年末から出てくることとなります。たとえ婚姻者数が増えて、離婚者数が減っても、所得減の不安、未知のウイルスという恐怖に加えてソーシャルディスタンスの風潮もありますので、積極的な政策がなければ出生者数はより減少していくかもしれませんね。
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