今日は日商簿記試験についてお話をしたいと思います。
私は公認会計士の資格の他、税理士簿記、財務諸表論や簿記1級など、会計関連資格保有が多いのですが、仕事自体は会計・財務・税務中心に経営企画全般を得意としています。
全て制覇して思うことは、それぞれの資格の有用性、コストパフォーマンスには大きな差があることです。
私は現役で経理の実務・人事も経験していますので、どれだけ社会に役立つかに関しての評価は、予備校の先生よりも自信があります。それぞれ、どれぐらい難しくて、どれぐらい役立つのか、いつ始めたら良いのか、実務的・客観的な視点で解説していきたいと思います。
日商簿記3級、2級、1級の比較(難易度・有用性・コスパ・将来性)
日商簿記3級~1級の難易度、有用性、コストパフォーマンス及び将来性を5段階評価で総括すると下記の通りとなります。
日商簿記3級 | 日商簿記2級 | 日商簿記1級 | |
難易度 | ★ | ★★ | ★★★ |
有用性 | ★ | ★★★★ | ★★★★ |
コストパフォーマンス | ★★ | ★★★★ | ★★★ |
将来性 | ★ | ★★★ | ★★★ |
難易度は級が上がるにつれて、比例して当然に上がっていきます。
勉強時間は概ね、1日2時間の勉強として、3級でで1~2か月程度、2級で2か月~4か月ぐらい、1級で1年ぐらいでしょう。
勉強時間を倍にすれば、全て概ね半分程度になります。
しかし、有用性については、資格取得の目的によって変わってきます。
まず、日商簿記3級は、面白くない、役立たない、その割に勉強しないと普通に落ちると、なかなか厄介な資格です。
面白くない理由は、3級で学ぶ内容はあまりに実務とかけ離れており、また経理で役に立つ局面も限定されるからです。
一方、簿記2級はそれなりに勉強すればすぐ合格できる難易度の割に役立つ局面が多いです。
大学受験で有利になることもあれば、就職、社会人でのマネージャーへの昇進要件や評価基準として、その後は会計の一般常識として役立ちます。もちろん、経理実務でも役立ちます。
大学によっては、簿記3級や2級で授業料減免や免除などのメリットがあったりします。商業系大学などは、簿記2級などの資格を持つ人材を非常に評価していますが、これは就職まで安定的に推移することが期待されるからです。
2級合格の能力があれば、全般的に基礎的な学習を終えているので、実務経験がなくても2,3日で実務に沿った理解を抑えられます。
なぜなら、会計入力者として当座、必要な能力は会計システムの使い方と、その会社で通常利用する会計処理に限定されるからです。
このため、簿記の勉強を始める方は、3級だけでなく、2級の範囲まで一緒に勉強して、同時に受験することをお勧めします。
2級の勉強範囲は3級を包含するので、3級も合格しやすくなります。3級だけ勉強すると、意外に落ちます。
次に簿記1級ですが、こちらは合格後の見返りとして高い評価が期待されますが、難易度も高くなり、決してコストパフォーマンスが高いとは言えません。腰を据えて勉強する必要があります。なお、会計士試験を勉強する場合は簿記1級は登竜門と言われています。
子供の早期学習は有用?
私個人の見解としては、早慶附属等大学受験の必要がない場合を除き、幼児期はもちろん、小学校の間は不要と考えます。
幼児期は、まだ複式簿記の本質が理解しがたく、これは無理のない話です。
算数の計算や国語の読解を高度に行うことができても、借方貸方の概念につまずくと思われます。これは小学校の低学年でも同様。
加えて、簿記は英語や数学のような早期勉強のメリットの要素が薄く、簿記の勉強で費やした時間だけ、他の勉強の時間を失い、機会損失となるからです。小学校低学年で簿記の勉強を、、、と考える方がいたら、今一度よく考える必要があります。保護者様がよく会計を理解しており、その本質を理解しやすい表現で教えていくのであれば話は別ですが、通常は数学の学習が先という結論になるでしょう。
会計士資格の最年少合格を目指すなど特段の理由があれば、小学校上級生頃から始めても良いかもしれませんね。
お子様の能力、年齢と将来の目標に照らして、少しでも参考になれば幸いです。
AIとの関連
日々雑誌やネットニュースで「AIにより、単純労働の職がなくなる」というニュースが報じられています。
この点、会計入力が毎回対象に挙げられますが、これを理由に簿記資格の勉強が意味ないと解釈するのは危険です。
なぜなら、前述したように、簿記資格で役に立つ局面は下記の通りで、ほとんどAIは直接関係しないからです。
・大学入試の評価・・・個人の能力を証明する手段なので関係なし
・就職時の評価・・・同上
・管理職で求めれる能力・・・同上
・経営幹部の一般常識・・・知らないと恥ずかしい
唯一、シンプルな会計入力に関しては代替されていくでしょうね。関係書籍、ニュースではこの点を指しているのでしょう。
しかし、会計と言うものは税務と異なり、本来自由です。この本質に気づくのは簿記1級以降ですが、状況によって適切な会計処理を判断する能力はAIには難しいでしょう。これは税務もしかり。最近チュートリアルの徳井さんのニュースがありましたが、このような税務の局面ごとの判断はAIには難しいでしょう。完全AIが実現し、簿記の有用性に影響を与えるようになるのは、まだずっと先の話になりそうです。
簿記試験は大学の頃から始めておくと実にあっけない内容ですが、社会人になってから初めて取り組むと、意外に苦戦するかもしれません。それなりに時間を拘束されていくからです。
このように、簿記試験は全体として、個人の一般常識として抑えるべき論点です。
まずは簿記2級まで抑えて、幅広い将来設計をしていきましょう
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