本日は2019年4月に新設された東京農業大学稲花小学校のご紹介です。
2022年度(2020年11月試験)で4期目となります。
当ブログ記事は開校前に最初の記事を書きましたから、恐らく日本で一番古い個人ブログ記事です。
アクセス
稲花小学校は下図の通り、東京農業大学に隣接しています。
最寄り駅は小田急線経堂ですが大人の足でも徒歩15分なので、実際にはバスで行くことが多いでしょう。
渋谷からバスに乗ると、最寄りのバス停農大前まで、凡そ30分程度要します。
また、三軒茶屋からであれば15分程度で行けます。最寄りの農大前のバス停から学校まで歩いて5分程度です。
稲花小学校の立地は一見陸の孤島かと思いきや、よく見ると世田谷のほぼ全域から通学可能です。小田急線、東急田園都市線に加えて東急世田谷線までカバーします。
実質的に通学可能か、という視点は非常に大事ですのでこの点支持を得るのではないでしょうか。バスの通学例を挙げますと下記の通りです。
渋谷→下りの空いているバス
成城学園前、二子玉川、等々力→バス始発で座って楽々。
用賀、駒澤、三軒茶屋など→始発ではないが、バスでそれほど遠くない。
満員電車で通うよりずっといいですね。
バス停から歩く途中、進学校である附属高校を通り過ぎると、右手に校門が見えます。
あいにくの雨でしたが、さすが綺麗で広いグラウンドでした。
上図は開校前のグラウンドですが、芝生で綺麗ですね。恵まれた環境を予感させます。
今は多くの子どもたちが遊んで、また違った様子になっているでしょう。
本当の実質倍率検討
稲花小学校の定員は男児36人、女児36人の72人です。
新設のプレミアムが受験生にプラスに働いたかわかりませんが、初年度試験は、定員72名に対して志願者が殺到しました。
2019年度(2018年11月)の試験結果は、受験者数(願書提出者)865名(男子472名、女子393名)、合格倍率は男子13.1倍、女子10.9倍。
2020年度(2019年11月)の試験結果は、受験者数(願書提出者)925名(男子529名、女子396名)、合格倍率は男子14.7倍、女子11倍。
2021年度(2021年11月)の志願者は、述べ1,269名(前期640名、後期629名)。600人近くが両日程に出願しており、AERA Englishによると複数回受験を省いた受験者総数は692名(男子367名、女子325名)、合格者は98名(男子48名、女子50名)とのこと。
よって、受験者数に基づく東京農業大学稲花小学校の2021年度の実質合格倍率は、男子7.65倍、女子6.50倍です。
このように、稲花小学校は昨年まで試験日程が2日あり、2回受験できたことから志願者の倍率計算には気をつける必要があります。権威ある雑誌でさえ昨年までこの延べ総数を母集団として倍率を計算して同列で比較しているケースがあり、やや誤解を招きます。
志願者の実人数692名は、出願時締め切ってますのでこれ以上は増えません。
合格者は辞退者も加味して多めに出しますから98名。すると、本当の倍率は7.06倍です。因みに、AERA様の数字を引用する前は推定計算していましたが、この場合も7倍と昨年11月から記載していましたので、概ね近似しています。
また、試験時の欠席者を踏まえると、もっと下がります。
この計算が正しいとするならば、稲花小学校の倍率計算には注意が必要です。
述べ数で計算すると、2回受験する方を別人として計算しています。例えば、もし試験回数が5回あったら、、、5回出願する方を述べ計算して、3,000人以上の志願者とはしませんよね?
その場合、合格者総数は変わりませんから、倍率は30倍を超えてしまいます。
少なくとも、試験回数が複数回あるのであれば、この中で合格した方を除いていかなくてはなりません。
また定員数ベースで計算する場合も同様です。実際は多く合格しているのに、定員ベースで計算すると結果がかなり異なります。難関校はほぼ定員近くで合格者を出し、欠員は補欠合格という形で対応しています。
このような要因から、受験者を人の頭数で考えて、692名受けて実際に98名合格した、という情報がシンプルでわかりやすいです。
かつて合同説明会の質問コーナーで伺ったところ(2021年度受験時)、この数はあくまで願書提出者で、実際の受験者は相当数減少したとのことです。
これはどの学校も同様ですが、本年も難関校で試験日程が読めない学校が複数ありますので一定数は欠席者がいるはずです。ここでお話を伺った限りでも、実質倍率はだいぶ違うという印象を持ちました。
また、前期と後期を二回に分けていることから、チャンスが二回に増えるようで、それぞれの合格率は相応に下がり、倍率が上がります。大手幼児教室の集計によれば、前期と後期の倍率は相当異なり、後期のみで推計する倍率は20倍以上とのことでした。
なお、2022年度は試験制度が変わり、11月1日~4日から選択型になりました。
これでどうなるかというと、上記の被りがなくなります(延べという概念が消滅)。
よって、倍率は志願者の大きな増減がなければ、上記適正な倍率、7倍前後に近づくと予想します。定員ベースで計算すると10倍弱です。それでもかなり難関ですね。
ネット上でも高い志願倍率の情報が独り歩きしていますが、情報に流されず、説明会へ積極的に参加して、直接質問することをおすすめします。
2022年度募集要項:試験日程選択へ移行、面接はオンライン継続
昨年、オンライン面接となり話題となりましたが、今年も継続されることとなりました。
しかし、それより大きな影響が、試験日程の選択です。昨年は試験を複数回受験することができ、ほとんどの方が複数受験する形で申請したようですが、今年は11月1日~4日中から試験日いずれか1日の選択方式となりました。都市大と似ていますね。
募集人員 | 男子 36 名 / 女子 36 名 |
検定料 | 25,000円 クレジットカード・コンビニエンスストア・ペイジーのいずれかを選択 10 月 4 日(月) 13:00 Web 入金受付締切 、16:00 コンビニ・ATM 支払受付終了 |
出願期間 | 「miraicompass」によるインターネット出願 10 月 1 日(金)10:00 〜 4日(月)13:00 |
試験期間 | 事前面接 10 月 11 日(月)〜 29 日(金) オンラインにて実施 本校より指定された日時(変更不可) 志願者数によっては土日を含む 試験日 11 月 1 日(月)/ 2 日(火)/ 3 日(祝)/4日(木) の いずれか1日 受験日の希望を申請可(志願者数によっては希望通りにならない場合あり) (試験内容)ペーパーテスト、行動観察 |
合格発表 | 11 月6日(土)10:00 〜 出願サイト「miraicompass」にて結果発表 合格通知・入学手続書類を本校より郵送 |
入学手続 | 入金締切 出願サイト「miraicompass」にて入学金 250,000 円支払手続 11 月 9 日(火) 13:00 入学金 Web 入金受付締切 16:00 コンビニ・ATM 支払受付終了 書類郵送 11 月 9 日(火)までに送付(消印有効) |
URL | 入学試験|東京農業大学稲花(とうか)小学校 (nodaitoka.ed.jp) |
入学金までクレジットで完結する学校は珍しいですね。
オンライン面接はまだまだ未知数な点が多く、環境整備など対策に神経を使いそうです。
2022年度の面接質問票の概要、面接内容
2022年度の面接質問票、面接で聞かれた内容の概要は下記の通りです。
2022年度 事前面接用質問票の概要
内 容:
志願者に関すること、志望動機、家庭の教育観等について、所定のフォ
ーマットに記述し、提出(郵送)してください。
用 紙
記入する項目が記載されたフォーマットを9月中旬にHPにアップします。
(手書きの場合は pdf ファイル、PC で入力する場合は Word ファイル)
ダウンロードしてご利用ください。
・面接時の参考資料として用います。
・PC で入力する場合、書式(1 行の文字数や行数、文字サイズ、フォント等)は変更できません。
・手書きの場合、用紙を出力し、ボールペン等の消えない筆記具を使用してください(修正液等は可)。
鉛筆や消せるボールペンは不可とします。
2022年度の面接事例
※試験を受けた受験生にご協力いただいた内容です。下記信頼度は高いですが、個人の特定を避ける修正はしております。
2021年度面接質問票の内容
2021年度の面接質問票の内容は下記の通りです。
質問が多く、非常に手間がかかります。稲花小学校は保護者とのマッチングを非常に重視しているので、これにより志望者の本気度を図る趣旨があると推察します。後ろにいくに従って個人差が出て差がつきそうです。
2022年度試験日程:合格に一番近い試験日は?
ご存知の通り、11月1日を中心とする初旬は第一希望日が集中する日として広く知られています。
今年は11月1日~4日と選択肢があります。
この点、稲花第一志望であれば、迷わず11月1日など早い日程にすべきです。
これは学校に質問しても、どの日程でも有利不利ないという回答があるところですが、そのまま鵜呑みにするのは総計です。
11月2日、3日、4日にすると、後になればなるほど他校と併願しやすい代わりに、11月1日に難関校の受験を終えた高スペックの猛者たちが、結果待ちの状態で受験しにくるケースがあります。また、特に4日は平日木曜日ですから、ここを選ぶ理由は通常第2志望だからと推定されるに他なりません。
どの学校も第一希望かどうかという点は非常に重視していますから、この疑念は1日に受験するだけで払拭されます。
有利不利を超えて、誠意を証するためのチャンスです。
過去データですが、試験後期は倍率が20倍を超えたと大手幼児教室で文章で表記されています。
これが正しいとすると、後ろの日程は避けたいですね。
受験日によって優劣はないという説明がなされていますが、ライバルが強い日とそうでない日ではどちらが望ましいか言うまでもありません。難関校トップレベルのお子様は家庭全体ですさまじい能力を見せますので、彼らと同じ日で受験するのは避けたいです。
内部進学と外部受験(2020年6月オンライン説明会)
※昨年の情報なのでご注意ください
相応の実力を備えてという条件つきですが、基本的に全員が東京農業大学第一高等学校中等部への進学を想定しています。
2020年度は外部受験をする場合はこの権利を持ったままの受験はできないと明言されていました。
他の中学受験をする場合は一中へ進学できないというお話であれば、洗足や都市大と比較して劣後する状況でしたが、
2021年度(2020年6月20日)のオンライン説明会にて、他中を受験した後、希望が叶わなかった場合も、一中を受験し進学することを妨げないと校長よりお話がありました。
もともと、近隣の都市大付属小学校や洗足学園小学校(女子のみ)は、最難関中学校を受験しながら、駄目であってもレベルの高い進学校である中学へ進学できる選択肢がありました。
農大一中の入試は2020年度でいえば日程的に2月4日(第三回)が当てはまりますが、これを指すのか否かは具体的に明示されていません。御三家等最難関校を受験する方にとっては能力的に射程圏でしょうから、将来の選択肢が一つ増えます。
農大第一高等学校も、国公立進学者や早慶合格者が多く、進学実績は良好です。MARCHが一番多いようですが、早慶の合格者も多数います。上位1/3に入れれば、早慶以上が期待できるレベルでしょうか。
中学受験をするといっても、塾通いをした結果、難関校である一中以上の学校に行ける成績に至るかどうか、小学校入学時点で判断することは難しいです。高学年になってから選択することができることは受験者にとってメリットしかないので、洗足や都市大と受験生が一部競合していくと予想します。
但し、学校は受験のための特別な支援はしないと引き続きお話されており、中学受験校であることを明言している洗足、都市大と学校のスタンスが異なり、この結論が出るのはまだ4年も先です。有利不利に関しては確定的なことはわからず、現小学生の実際の進路を待つ必要があるでしょう。
2020年度の試験内容(2019年11月の試験)
農大の試験構成は下記の通りです。
絵画はしばらく出ない可能性が高いとのお話もありました。
1:テーマ作文(面接資料とする。)
「親として子供に伝えたいこと」
正解を探っているわけではなく、教育理念とのマッチングを見ている。
2:事前面接(親子)
テーマ作文を前提として、志望動機、児童の様子、家族の教育観、学校の教育方針とのミスマッチがないか、日常的な親子の関わり方をみる。概ね10分ほど。家でどんなことをしていて、お子様がどんなことに興味があるのか。
絵本を読んで見せる様子を見せるなどの課題も出た。
3:ペーパーテスト
一般的な内容。
出題は、お話の記憶、推理、注意、知識、比較、お話の記憶、位置、順序、見え方(観察)、迷路、図形、点つなぎ、言語、道徳、動植物、季節感、生活用品、数、大きさなど。太字は説明会で挙げた重要論点。
4:行動観察(月齢を合わせる)
集団活動:指示に従って、仲間と協力して課題に取り組む。新聞紙を用いて5人でボールを運ぶなど。
運動:指示に従って、所定の運動を行う(運動能力をみているわけではない。)
自由遊び:指示されたルールの範囲内で友達と一緒に自由に遊ぶ。
農大稲花小学校の二年目の試験ですが、お話の記憶と点図形、片足立ち、クマ歩き、ボールを使った行動観察が出たようです。
3と4の優劣はなく、バランスが大事と説明会で説明。
全体的に筑波の試験内容と似ているようにも感じます。
受験生の間では昨年の試験内容が、某スポーツスクールの体力測定の内容と全く同じという評判でした。
毎年何が役に立つかわかりませんが、今年はお受験体操スクールではなく、幅広く体を鍛えていたお子様と、筑波の対策をしていたお子様が有利だったと推察します。
個人的には、塾通いを前提としたお受験体操スクールの体操よりも、純粋な運動と指示理解を試す試験の方が好感が持てますね。
学校特徴及び説明会・質問ブースで得た情報
受験及び進学面以外における、学校特徴は下記のとおりです。
教育理念、教育方針及び教育指標
教育理念は冒険心の育成です。
これは大学創設者の榎本武揚(えのもとたけあき)公が、未知なるものにひるまず、困難に立ち向かう大切さを説き、「冒険は最良の師である」と表現したことに基づき、学校側も十分な準備のもと、未知なる新しい世界に挑む気骨と主体性をもち、科学的・実践的に学ぶ人間を育てることを目指しています。
小学校の夏秋啓子(なつあきけいこ)校長は農大の副学長でもあり、専門は植物病理学です。
コロナ禍環境下で実際にオンライン授業もされています。
教育方針は3つの心と2つの力。
3つの心とは、深く考える探求心、豊かな感性、継続する向上心。
2つの心とは、広く柔軟なコミュニケーション力と、運動のための体力。
この教育方針は更に10の教育指標に落とし込まれ、成績表もこの指標に基づいて評価されます。
教育指標は下記の通りです。
①興味・関心
②想像力
③問題解決力
④習得力
⑤主体性
⑥目標設定力
⑦発信力
⑧傾聴力
⑨持続力
⑩自律力
農学を生き物、食べ物に関する生活に身近な学問として小学校教育に最適な分野であると認識しています。
カリキュラムと教育特色その他情報
・綺麗な校舎と最新設備で、1年生から6限~7限授業
通常始業式の日はすぐに帰ることが多いですが、稲花小学校では、始業式から6限授業です。校舎は非常に綺麗で、まだ一部しか使っていません。黒板はホワイトボードと電子黒板のみで、チョークは使いません。
・体験型学習を重視し、確かな学力を身に着ける。
多用な体験型学習により、考える力と学び続ける力を獲得し、確かな学力の定着を目指します。
「稲花タイム」を設置し、1年生から理科と家庭科を設置。生き物や食を数多く題材とします。
EX.水田学習:大学や卒業生と連携して田植えを実施。卒業生の農家の話を聞いたり稲刈りをして、お米をみんなで一緒に食べる。
農大馬術部厩舎の見学 など。
・全て給食(お母様方は嬉しい)
週5日給食で、校内施設で調理し食育を重視。できる限りと言う条件になりますが、食物アレルギーの配慮もしてもらえます。
コロナ禍で配膳は中止中。
・アフタースクールの保育が充実(人数制限を設けず、休暇中も対応。週3で2万~3万円程度)
NPO法人が運営。1年目の学生は72名中69名が登録し、毎日20人~30人が利用(希望日だけ利用できる)。
学校内でピアノ、プログラミング、サッカー、そろばん、ミュージカルなどに取り組む。
夏休みも実施(弁当注文可、8時30分~18時30分)
・充実した農大施設との連携
様々な局面で、農大教授の講義を受けることができる。
・英語学習が週5回
始業式の日からずっと、遠足の日など特別な日を除き、毎日英語の授業が1時間あります。1クラスを2グループに分けて18人で授業を受けます。プログラムには、子供英語で定評のあるGrepeSEEDを採用しています。
同時に日本語も高いコミュニケーションを身に着けるべく国語科を重視。
英語の先生は野外学習など、英語以外の機会でも積極的に参加します。
説明会ブースで英語は本気とおっしゃっていましたが、週5回英語学習を行っている学校は数えるほどしかありません。
高額の英語学童保育の投資は不要となりそうです。
・伊豆の宿泊学習(1年生)
1泊2日の宿泊学習ですが、変わっているのは、保護者も参加できることです。
伊豆シャボテン動物公園や熱川バナナワニ園。
但し、親子は別に行動します。子供は子供で学習し、親は距離を保って行動します。バスも別で、校長先生のバスで保護者は移動で、夜も子供たち就寝後、解説があるとか。親自身も講義を受けて学ぶ機会が得られます。
・コロナ休校中の対策・オンライン授業
3月2日から休校→3月中は毎週、課題の定期配信。
4月6日入学式縮小実施→毎週、課題の定期配信。
4月22日以降、毎週1回のZOOM学級会、5月22日より毎週1回のZOOM英語、5月30日にZOOM保護者会
6月9日より通学開始:1クラス36人→24人クラスへ。
この他、説明会の質問コーナーで直接得た情報として下記挙げておきます。
・昨年の倍率は激戦でしたが、ホームページでダウンロードして取り組む作文や面接では「農大稲花小学校の考え方に沿ったご家庭か否か」という点を非常に重視していたとのこと。
すなわち、小学校のビジョンに共感するメッセージを随所に込めないと合格は厳しかったでしょうね。(私見になりますが)次年度の試験のテーマはわかりませんが、どのようなテーマであっても上記趣旨を作文に込める工夫は必要ではないでしょうか。
・初年度の入学者は4月~3月と生まれ月がばらけていたとのこと。一方で、2年目は少し4月、5月生まれが多いようです。
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