今日は久しぶりに簿記、公認会計士のお話をしたいと思います。
テーマは会計士試験と大学受験との両立です。できるだけわかりやすく説明したいと思います。
公認会計士とは
公認会計士は、会計監査のプロフェッショナルとして、その業務範囲は独占業務の「財務諸表監査」をはじめ、財務・経理、株式公開支援、会計コンサルティングなど多岐にわたります。
監査法人に所属して会計監査をするほか、税理士業務を行ったり、独立したり、一般企業に所属したり、フリーだったり進路は様々です。
公認会計士を名乗るためには、まず公認会計士試験に合格して、一定期間職務に従事し、修了試験をパスする必要があります。最大の難関は最初の公認会計士試験で、試験範囲は膨大です。
どれだけ急いでも1年はかかり、試験範囲を全て網羅して本試験までたどり着く方は少なく、半分もいないでしょう。
合格率は、2018年度は11.1%、最年少は18歳です。内訳はほぼ4割が大学生、4割が大学を卒業した受験生で、一般的には受験に専念してなければ非常に厳しい試験です。合格までにかかる年数は、ごくまれに1年という方がいますが、あまり参考になりません(簿記など関係科目を既に勉強していたかもしれない)。2年で合格すればとても早く、3年が標準。4年はまあ頑張ったね、、という感じです。
合格後の進路は、最初は監査法人に勤めて実務経験を積み、その後再度修了試験を経て正式な公認会計士となるパターンが多いです。その後は人それぞれですが、会計士の良い点は下記の通りです。
・1年目から年収が500万円程度もらえる(残業等諸々込み)。
・どのような職に就くか、制約されず自由な幅が広がる。
・社会的信用を用いて、仕事の幅が広がる。
・会計財務・経営学は実務に直結して役に立つ。
一方、デメリットは下記の通りです。
・試験勉強に時間をかければかけるほど撤退したときのダメージが大きい。
・一般に監査の仕事はつまらないと言われることが多い。
公認会計士試験の合格者数・合格率推移(過去12年)
公認会計士試験は原則として、多くの受験生はまず短答式試験に臨み、短答の合格者が夏の論文式試験に挑み、11月中旬ごろ合格発表されます。2020年度はコロナ禍の関係で試験が11月に実施され、合格発表は2021年2月16日に行われました。最新の結果を含む合格者推移は下記の通りです。
区 分 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
願書提出者数(a) | 25,648 | 23,151 | 17,894 | 13,224 | 10,870 | 10,180 | 10,256 | 11,032 | 11,742 | 12,532 | 13,231 | 14,192 |
短答式試験受験者数 | 22,579 | 20,790 | 15,653 | 11,738 | 9,290 | 8,620 | 8,644 | 9,416 | 10,153 | 10,563 | 11,598 | 12,260 |
短答式試験合格者数 | 2,396 | 2,231 | 1,274 | 1,766 | 1,405 | 1,507 | 1,501 | 1,669 | 2,065 | 1,806 | 1,861 | 2,060 |
論文式試験受験者数 | 5,512 | 4,632 | 3,542 | 3,277 | 2,994 | 3,086 | 3,138 | 3,306 | 3,678 | 3,792 | 3,719 | 3,992 |
最終合格者数(b) | 2,041 | 1,511 | 1,347 | 1,178 | 1,102 | 1,051 | 1,108 | 1,231 | 1,305 | 1,337 | 1,335 | 1,360 |
合格率(b/a) | 7.96% | 6.53% | 7.53% | 8.91% | 10.14% | 10.32% | 10.80% | 11.16% | 11.10% | 10.70% | 10.09% | 9.60% |
合格者最高年齢 | 61歳 | 64歳 | 59歳 | 57歳 | 67歳 | 67歳 | 67歳 | 62歳 | 55歳 | 62歳 | 61歳 | 60歳 |
合格者最低年齢 | 16歳 | 19歳 | 18歳 | 19歳 | 17歳 | 19歳 | 19歳 | 19歳 | 18歳 | 18歳 | 18歳 | 19歳 |
2021年度の試験は合格最年少が19歳です。19歳は大学1年から始めた場合の最短合格ですが、かなりの数がいると思われます。18歳が一人もいないという点はやや意外です。18歳は、高校生からの準備が必須となるものの、理論的には十分可能で、大学附属校の方であれば、現実的です。
下記は2019年の年齢別合格率です。構成は概ね例年変わりません。
年齢 | 合格率(%) |
20歳未満 | 10.1 |
20歳以上25歳未満 | 15.3 |
25歳以上30歳未満 | 11.6 |
30歳以上35歳未満 | 8.1 |
35歳以上40歳未満 | 5 |
40歳以上45歳未満 | 3.4 |
45歳以上50歳未満 | 1.9 |
50歳以上55歳未満 | 0.8 |
55歳以上60歳未満 | 1.2 |
60歳以上65歳未満 | 1.2 |
65歳以上 | 0 |
上図の通り、合格率は30歳まで10%をキープしていますが、その後急減していることがわかります。
これは、会社員など働きながら勉強する方の割合が増えるからですが、30歳を超えて勉強を始めようとする方にとっては嫌なデータです。試験はどうしても暗記量が多いので、物覚えが良く、まとまった勉強時間が取れる若年層に有利な試験です。
20歳未満の合格率が最高でない理由は、18歳で勉強を始める方が多いからと推察します。通常1.5年~2年で合格したら最短合格となりますので、それでも10%の合格率をキープしているのは非常に高い数字と思われます。
なお、女性比率は毎年2割ほどです。受験者の学歴がある程度高く、ボリュームゾーンの学歴は早慶、MARCH、関関同立あたりですので、それなりの難関とされています。
公認会計士試験の特徴
上記データを踏まえ、この試験の大きな特徴は下記の通りです。
無職専念が有利
会計士試験は試験範囲が広く、まとまった勉強時間を必要とします。
通常は朝から夜まで勉強することが当然で、その中の質が求められます。
受験生は一日8時間ぐらいが平均と思われますが、合格者は実際のところ、10時間以上(休憩除く)勉強している方も多いでしょう。
合格者に占める社会人合格者の割合は6.6%ですが、これはあくまで自己申告。フルタイムで働いている方はもっと少ないと予想します。
予備校へ通う必要がある
実際のところ、合格者の99%は受験予備校に通っています。
大学に加えて専門学校へ通学することは、よくダブルスクールと称されます。費用は初学で割引含め概ね40万円~50万円、通学期間は1.5年から2年程度です。残念ながら不合格で継続する場合は無料~30万円程度ですが、20万円程度が多いと思います。
なぜ予備校が必須かというと、大学受験のように市場が大きくないことに加え、毎年試験委員が入れ替わり、問題傾向もがらっと変わってしまうからです。新しい試験委員が何を専門としているかなど、都度調べるのは著しく不合理です。
このような試験制度においては、皆ができているところを確実にできるようにして、皆ができないところはできなくてもよい、というのが会計士試験の鉄則です。
このような理由から、一般の書籍はほとんどなく、これだけで勉強する人はほぼ皆無です。合格率は低いですが、社会人でも合格は可能、但し独学で合格したという話はあまり信じない方が良いでしょう。
予備校は合格率と母集団のバランスでみると、私が合格した15年以上前は資格の大原が合格率が高かったですが、近年はCPA会計学院が人気で、2017年から2021年にかけて、合格者が倍増しているようです。
高校在学中の合格は著しく少ない
最低合格年齢は例年18歳~19歳ですが、最年少記録は2010年の16歳です。
これは長らく破られていません。年によっては高校生で合格したりする方も多いですが、統計的にはもう少しいてもおかしくないはず。
なぜいないのでしょうか。
私見になりますが、この理由は現状の受験システム、大学試験科目との連携、早期合格のメリットを天秤にかけた結果といえると考えます。会計士試験が難関というよりも、優秀な層が早い段階から勉強しないから、と考えます。
しかし、17歳や18歳で合格すると、実に華やかな未来が待っている可能性があります。珍しいので、監査法人でも可愛がられ、優秀な人材として重宝されるでしょう。5年も働けばもう立派な会計士ですが、それでもなお23歳ですからね。早期合格は非常に実りある社会人生活を与えてくれます。
会計士試験と大学受験との両立
上述したように、本来会計士試験の勉強は丸一日勉強したとして、1.5年~2年必要です。また、会社法などは完全に法律科目なので癖があり、高度な読解力が必要です。
もし早い段階で会計士試験に取り組むのであれば、大学受験につながる勉強はかなりセーブしなければなりません。並行して進めるにしても、学校の勉強時間はかなり影響を受けるでしょう。
会計士早期合格のために商業高校へ進学するという手もありますが、最年少合格のためだけであれば、個人的にはお勧めしません。会計士に出身大学など関係ないと言いたいですが、やはり多少影響します。高校在学中に合格すれば、結果的に得るものがあったことになりますが、大学在学中に合格するメリットと比較してどの程度の差があるか微妙なところです。
これらを踏まえ、会計士早期合格を目指しやすい環境は私立大学の附属高ということになります。受験を回避できる上、自分で自由にできる時間を比較的有意義に使えるからです。デメリットを抑えた現実的なプランとしては、これが一番望ましいですね。
大学が既に決まっていれば、中学生から簿記を始め、高校でその他科目をやるというスタンスで、17歳で合格できるような準備をすることが可能です。
法律用語がとっつきにくいかもしれませんが、記憶力はその辺の社会人より優れますから問題ないでしょう。
大学に入ってから監査法人でバイトすれば、色々学べるうえに、時給3,000円以上は期待できます。
また、更に大きなメリットが、大学在学中の会計士ホルダーは一般の就職活動においても絶大な強さを発揮します。
監査法人の会計士がうらやましいと思うようなところへ行ける可能性もありますね。
会計士試験はまず簿記1級が登竜門ですが、簿記2級、1級で止めたとしても、
そこで学んだことが将来に活かせるのがメリットです。現代社会において会計知識は必須であり、マネージャークラスの
役職には英語とともに会計センスが要求されることが多いです。
では大学受験予定で、最年少合格を目指したい場合はどうするか。
この場合は、潔く高校2年生までに合格可能性について見切りをつけましょう。
簿記1級が会計士試験の入り口みたいなもので、受験資格のバロメーターです。ここまで終えていれば、会計士試験で勉強する範囲の凡そ2~3割をカバーできることとなります。簿記1級は、年に2回チャンスがあることからも、世間で言われるほど難しくありません。
高校1年からは会計士受験に専念し、高校2年に受験。
今は短答式合格を持ち越せるので、仮に高2で論文試験が不合格でも高校3年の夏の受験で有利なポジションに着けます。ここで合格しても最年少クラスです。この実績は自分を生涯助けてくれるでしょう。
高校2年か3年で合格すれば、卒業後に監査法人で特異な扱いをされ、高時給でバイトさせてもらいながら受験勉強もできます。ちょっと乱暴な言い方ですが、1浪ぐらいしてもお釣りがくると思いますよ。
監査法人のバイトですが、現状の学生は事例を知りませんが、さすがに3,000円は下らないでしょう。因みに会計士経験者のバイトは時給5,000円前後が相場です。
他の方よりリスクを取ったプランになりますが、いかがでしょう?
漫然と大学受験を横並びで受験するよりやりがいを感じませんか?
コメント