小学校受験塾の月謝は非常に高い。
ということは広く知られていますが、なぜ高いのか?を考えてみたいと思います。
この点、6年間私立小で過ごす学費(概ね500万円~900万円+α)のみならず、受験に伴うコストが非常に重いです。
費用総額は志望校により非常に幅広くなりますが、難関校を受験する方は数百万円のお金を費やす方も多いようです。
下記記事で準備にかかるコストをまとめていますが、その中で大きなウェイトを占めるのは小学校受験塾です。
【2021年度最新】小学校受験でかかる費用総額はいくら? | 幼児教育と教材の効果を検証するブログ (grow-child-potential.com)
小学校受験塾はどこも1分あたり80円~120円ほどかかり、格安の小学校受験塾というものはほぼ存在しません。
現状は、格安の教室があったところで、不安になるような状態かもしれませんね。
【小学校受験】首都圏お受験教室 費用比較(伸芽会、こぐま会、ジャック、理英会等) | 幼児教育と教材の効果を検証するブログ (grow-child-potential.com)
比較しやすいのが、非お受験の幼児教室です。
1時間、週4回で展開するミキハウス幼児教室は、8名~12名の定員で、教材費を考慮しても入れても月額1万円以下で済みます。分当たりの単価は40円~50円となり、小学校受験の単価の約半分と言って良いでしょう。
なお、講師は2人つきます。同様の価格帯で展開している非お受験の幼児教室は他にたくさんあり、教室規模も様々ですので、このあたりは大差なさそうです。分単価が倍で、講師も倍になればこの議論は終了ですが、定員10名に対して講師が4人つく教室はほぼないでしょう。
ここでまず定員を深堀してみます。
小学校受験は一人一人あたりの手間暇がかかるから、少人数を前提とした月謝なのでは?
というのが一番最初に思いつく高い月謝の理由ではないでしょうか。
このように考えると、確かに4人~5人程度の少人数を売りに指導している幼児教室もあります。これであればある程度計算が合いますね。少人数だからコストも倍かかり、月謝は高いと。そして、現実にそれでやっていけるわけですから、運営的にも成り立つわけです。
ですが、実際は10人以上、時に20名近く集まる教室もたくさんありますね。これらはどのように説明づけられるでしょうか。
オフィス賃料については上述の通り様々ですので、ほぼ埋没とみます。
妥当な月謝が決まるのは需給あってこそですから、これを踏まえ、月謝が高い理由として考えられる要因を挙げました。
・専門性
・講師の数
・参入障壁
それぞれ本当にあてはまるのか、深堀検証してみましょう。
専門性
専門性とは、この人だからこそできるという資格や能力です。
小学校受験塾は、士業のような専門資格は必要ありませんが、通常の幼児教室や学習塾よりも、実際の有資格者は限られそうです。
私立小に進学する母集団もまだまだ少なく、その業界に精通する方も少ないです。
私も学習塾の講師は経験ありますが、大学生でもできます。
しかし、もし大学生が小学校受験塾で学生が教えたら心配になりますね。
小学校受験の指導内容は、実際には9割がた大学生でも指導できる内容ではあると思いますが、細かい所作など含めると、どうしても難しいところもあるでしょうね。
有資格者が限られるという意味では、一定の専門性が認められるものの、これをもって直接高い月謝に結びつけるのは厳しそうです。
講師の数と人件費
次に講師の数と人件費です。講師は手間がかかるといっても、各幼児教室の数を見ていると、適正です。
少ないこともないですが、多すぎることもなく、平均して5人に1人あたり講師がつくイメージでしょうか。
つまり、上述の安価な教室と比べて特段多いということでもなさそうです。
小学校受験塾の講師の月謝は詳細は存じ上げませんが、人材募集で開示されている範囲では異常な単価でもなさそうです。
このため、教室によるという結論になるものの、講師の数が多いから、講師の待遇が良いから月謝が高いという理由にもならなそうです。
20名程度の大人数の授業の場合は、講師は4人つくか?というとやや疑問です。通常、収益は上振れるでしょう。
主たる収入は売上、主たる費用は人件費と賃料と考えると、賃料は固定費です。
人件費は幼児教室の場合は時間給の方も多いでしょうから、変動費の属性も帯びます。つまり、一授業あたりの儲けは収入総額から人件費を控除して算出されますが、変動部分の収益から費用を控除した利益は貢献利益と呼ばれます。
この貢献利益の束が固定費の束に追いつくと、±ゼロの損益分岐点となり、ここから先は青天井で利益が増えていきます。
儲かる匂いがすれば新規参入が増え、価格競争になるかと思いきやなりませんね。
ここに価格競争にならない理由がありそうです。
参入障壁
参入障壁と言う言葉はよく業界単位で使う言葉ですが、今回は塾に対するご家庭の参入障壁です。
小学校受験を考えるご家庭はある程度お金に余裕がある方が多いので、お教室の月謝が高いほど、
受験に強いご家庭が集まる→教室の実績も出る→評判が高まる→たくさん人が集まる→月謝は高止まり
というロジックが成り立つこととなります。
費用を下げて参入しても、合格実績が大手と変わらない評判を確立しない限り選択されないということです。
多くのご家庭は、教室やクラスのレベルを気にされる方が多く、高いレベルで切磋琢磨することを望んでいます。
事実、レベルが高い選抜クラスに入れる方は、望んでそこに通うことになります。
このように、お受験業界では月謝の高さが教室のレベル高さを示すアナウンス効果となり、月謝が高止まりしている可能性があります。費用の高さがブランドを醸成しているという解釈です。
こちらは直接的に立証する術がないものの、ロジック的に成り立ちますので、月謝が高くなる原因となっている可能性がありそうです。
まとめ
このように3点挙げて考えてみましたが、小学校受験塾はニッチな業界で、業界の特殊事情から月謝が高いことが市場で受け入れられ、需給一致していると言えそうです。
ではこれからもこの傾向が続くかと言うと、個人的には10年単位で見るとそうでもないと考えています。
近年、既存・新規問わず新しい教室が増えています。
供給が増え続けると、どこかで無理が生じます。
業界のパイが広がらない限り(受験生が増えない限り)、受験生獲得競争は激しくなってきます。
毎年右肩上がりともいかず、縮小する年もあるでしょうし、そもそも少子化傾向です。
費用という点では現状高止まりしているものの、多くのご家庭にとっては本来コストを抑えたい一要因です。
サービスの向上含めて、費用対効果を発揮して合格実績を出す教室が今後評価されていくと考えます。
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